相続した不動産を共有にした時の問題点

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親が所有していた実家を相続するというケースが多々あります。

例えば、今まで母親が住んでいましたが、母親もなくなり実家の処分をどうするかということで、とりあえずは兄弟の二人で法定相続分通り2分の1ずつ相続したとします。

 

とても単純な話で、法定相続分通りの相続となりますから何も禍根を残さないように思えます。

 

しかし、実はことはそこまで単純ではないのです。

 

今回は不動産の「共有に潜む罠」についてお話をさせていただきます。

 

共有とは

共有とは、所有権などの権利が複数人の所有あるいは、利用されている状態のことをいいます。そして、共有関係にある者のことを共有者といます。

 

そして、各共有者は「共有物の全部」を使用することができます(民法第249条)。

 

つまり、上記の例で兄弟二人が2分の1ずつ相続したという共有状態であっても、兄が家屋あるいは、土地の半分だけしか使えないというわけではなく、土地・建物の全体について使用することができるということです。

 

そう考えると、共有状態でも何の問題もないように思えます。

 

共有の落とし穴

しかし、民法第251条によると「共有物の変更・処分を行うには共有者全員の同意や判断が必要」とされています。

 

もう少し詳しく説明します。

 

例えば建物の大規模な改修工事を行ったり、建て替えたり、土地を宅地造成したり、盛り土をするなど、物理的な変更を加える場合、売却や処分、賃貸(短期間のものを除く)などの一切の取引行為には民法第251条により、手続きにおいて他の共有者全員の同意を得ることが必要となっています。

 

つまり、兄弟共有で相続した不動産をいざ売却や賃貸に出そうとしても全員の同意が必要となるということです。

 

その結果として、共有者の中でそれらの変更・処分などの条件に同意しない人が1人でもいた場合、それらを行うことができなくなります。

 

例えば、兄弟二人だからといって安易に共有状態にしたとしてもそれ以前に実家を今後どういう風にする予定なのかということを事前にしっかりと話し合っていなければ兄弟間で齟齬が生じる恐れがあります。

 

実際の事例

先ほどのご兄弟の事例ですが、長男さんは遠方に住んでいて、二男さんが親の実家に比較的近いところに住んでいました。

 

相続で取得した後に実家に近い、ただ、近いといっても車で1時間弱の距離に住んでいました。実家の整理などは弟夫婦が兄より近いということで休日に行っていました。

 

しかし、兄は弟に依頼するだけで全く協力的ではありません。固定資産税も当然折半のわりに実際の管理や手入れは弟夫婦が行うということになっていってしまいました。

 

弟夫婦は持ち家であり実家はもう処分したいと考えていましたが、兄は5年後定年したら実家に住もうと考えているようです。

 

実家の管理に負担を抱えた弟は兄に売却をしたいと相談しましたが兄は「大切な実家を他人のものにするなんて何を考えているんだ」と売却に応じてもらえず、しぶしぶと管理だけを現在も継続しています。

 

今回のケースでは最初から実家の処分管理について相続人間で話し合いをもたずに安易に法定相続分通りに相続した結果から弟側は不満を抱えることになりました。

 

このように、共有状態では共有者全員に負担が均等にいけばいいのですが、兄弟間という間柄なかなかなうまくいかないケースも出てきます。

 

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まずは、遺産を今後どうしたいのか相続人間でお話し合いをしっかりとしていただくことをおすすめします。

 

認知症の方の不動産の売却手続き~高齢者の親の自宅を売却したい~

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高齢になった親の施設の入居費用や介護療養費をねん出するために親の自宅を売却したいというご相談を受けることがよくあります。

 

また、親がすでに施設に入所しているので実家が不要になり、介護費用のためにも実家を売却したいという相談もよくうけます。

 

高齢の親御さんに判断能力が備わっていれば問題ありませんが、認知症などで判断能力がなくなってしまっている場合、手続きには家庭裁判所の関与が必要になってきますのでご注意が必要です。

 

認知症の方の売却手続き① 成年後見手続き

 

認知症の方が不動産を売却するためには成年後見手続きが必要となります。

 

家庭裁判所に親の成年後見人の選任の申し立てをし、成年後見人等の選任をしてもらい、成年後見人等が売却の手続きをすることになります。

 

そもそも、成年後見制度は認知症などで財産管理ができなくなった人にかわって財産管理をする人を家庭裁判所が決定する制度です。

ですので、たとえ実の子であろうとも勝手に親の財産を処分することができなくなってしまいます。

 

成年後見人に誰がなるのかはご親族の方からしたら非常に大きな問題となりますが、不動産などの財産があり、それを売却する必要があるなどの場合にはおおむね弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人等になる可能性が高くなります。

 

専門家の方にきちんと相談し、なぜ売却する必要があるのかを説明する必要があります。

 

認知症の方の売却手続き② 居住用不動産処分の許可

 

成年後見人等が選任されていても大きな財産の処分には家庭裁判所の許可が必要となります。

 

特に、もともと住んでいた自宅などを売却する際には「居住用不動産処分の許可」の申し立てを家庭裁判所にする必要があります。

 

居住用不動産処分の許可には具体的に誰に、いくらの金額で売却するかまで決定している必要があり、その売買契約書(案)あるいは、家庭裁判所の許可がでることを条件とした売買契約書を家庭裁判所に提出する必要があります。

 

家庭裁判所は認知症となって財産管理受けている本人の財産状況や不動産を処分しなければならない理由、本人の身体療養状況、今後の住まいが確保できているか、不動産は不当に安くはなく適正な価格で売却されるのかなどトータルで判断し売却の許可を出すか出さないかを決定します。

 

誰にいくらで売却するかが重要ですので、売買価格や買主が変更になった場合には原則として売却の許可を取り直さなければなりません。

 

まとめ

 

以上のように、認知症の方の不動産を処分するには家庭裁判所で手続きが必要となり、売却が完了するまでにも数か月はかかります。

 

ですので、現金化を急ぐのであるならいち早く専門家に相談し、成年後見手続きを進めていくことをお勧めします。

換価分割という遺産分割方法をしっていますか?

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遺産を相続する際に相続人の一番の関心ごとは遺産分割協議ではないでしょうか?

 

誰がどれくらい財産を取得するのか?

それには親の介護などへの貢献度や親からの生前からの援助の具合など様々な事情を踏まえて行われることが多く、一度相続人間でもめだすとなかなかうまくいかないケースがあります。

 

今回は遺産分割の方法の1つである換価分割について解説します。

 

換価分割とは

 

遺産分割には3つの方法があります。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割

です。

 

遺産分割の方法を知ることでより柔軟な遺産分割協議をすることができます。

 

換価分割とは不動産などを売却して現金化し、その現金を分割する手法です。

 

通常の現物分割では、不動産は長男A、預貯金は長女Bなどとそのものを分割します。

あるいは不動産を長男A2分の1、長女B2分の1などでわけることが通常です。

 

しかし、預貯金の額と不動産の価格に大きな隔たりがある場合など、例えば遺産総額の8割が不動産である場合など、預貯金だけもらう長女は不満が出るでしょう。

 

また、預貯金の一切を長女にもっていかれたら、現金が欲しい長男も困ることになります。

 

そのような際に、遺産分割協議書の中に「不動産は長男Aが相続するが、売却によって換価し、諸経費を差し引いたのち長男A2分の1、長女B2分の1の割合で分割する」旨の文言を記載することで換価分割としての遺産分割協議が成立します。

 

換価分割の注意点

 

不動産を現金化し、それをほかの相続人に分配する際にはかならず上記の旨の文言を遺産分割協議書に記載するようにしましょう。

 

そうでなければ、遺産分割協議の結果取得した者(上記の場合A)が売却して、その売買代金をほかの相続人(上記の場合B)に贈与したとみなされます

 

不動産は高価なものですので、贈与税も高額になってしまいます。

 

たとえば、3000万円で売却できて1500万円をほかの相続人に贈与したとみなされた場合、税率は45%となり贈与税は450万円ほど税金がかかります。

 

また、不動産が購入した時より売却した時の価格で利益が出ている場合には各相続人が譲渡所得税の申告をする必要があります。

 

相続財産の譲渡所得税の申告の根拠となる取得費は被相続人が取得した時の価格が根拠となります。

 

不動産を取得した価格のわかるものが必要です。被相続人の遺産の中から契約書を見つけておくことをお勧めします。

 

 

今回は遺産分割協議のうち換価分割について説明しました。

換価分割の場合にはきちんとした遺産分割協議書を作成しなければ贈与の問題もからんできます。また、譲渡所得税の申告も必要なケースも出てきますので、信頼できる専門家にご相談されることをおすすめします。

 

遺産分割協議にも不動産の査定を活用しましょう!!

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遺産を相続する際に、一番の関心ごとといえば遺産の分割についてでしょう。

 

遺産分割をするにあたって不動産ほど分割が難しいものはありません。

 

なぜなら現預金や株価などのようにその時の時価を正確に知ることができないからです。

 

今回は、遺産分割協議をする際に不動産の査定をしたほうが良いケースについてお話します。

 

不動産の価格を決めるのは誰??

 

不動産の価格については前回に少しお話をさせていただきました。

 

不動産の価値を決めるのはよく売主、つまり所有者だと思われています。

相続する不動産については相続人が売主、つまり所有者になります。

 

確かに、最初の売値は最終的には売主が決定します。

その際には不動産会社などの査定を参考に、不動産会社の営業担当のアドバイスをもとに決定することが通常です。

 

では、その価格が不動産の価格になるのでしょうか?

 

実はそうではありません。

 

確固たる根拠がない以上、不動産の査定をうけた金額でも結局買い手が現れないケースは多々あります。

 

ですので、最終的に不動産の価格は買い手が提示する金額ということになってしまいます。

 

言い換えると買い手が見つかって初めてその金額が不動産の価格になるといえるのです。

 

不動産の査定をしたほうが良い場合

 

では、具体的に不動産の価格を査定してもらったほうが良い場合とはどういうケースでしょうか。

 

まず、遺産の分割について紛争になる可能性が高い場合です。

 

最終的に訴訟などにもつれ込む可能性が高い場合だと、不動産鑑定士に正式な鑑定書を書いてもらうことも考えられますが、そうでないのであれば、複数の不動産会社より査定書をしていただくことで大まかな不動産の価格をしることも有益です。

 

また、不動産を一人の相続人が相続し、代償として金銭を支払う必要がある、いわゆる代償分割をする際にも不動産の適正な価格を知るために不動産の査定をしておいたほうが良いでしょう。

 

適正な価格以上に代償として金銭の授受をした場合には、金銭をもらった側が与えたがわからの贈与とみなされる可能性もあるからです。

 

最後に、複数の不動産を所有している場合などで、それを各相続人単独所有とする場合にも、不動産の査定をすることで金銭的な価値を把握することができ、より分割協議もスムーズに行うことができます。

 

遺産分割とは異なりますが、たとえば生前に遺言を作成しておくときなども不動産の査定をしておくことで遺留分についても正確に把握できるようになります。

 

以上のように、不動産の価格の算定は一般の方には非常に難しく、適正な価格より高くても安くてもいずれにしても分割協議に禍根を残す可能性があります

 

信頼のおける不動産会社に査定をしてもらうことにより遺産分割をスムーズに行うことができるようになりますのでぜひとも不動産の査定をご活用ください。

相続した不動産の価値を早く知ったほうが良いケースとは?

例えば父親が持ち家を所有していて、そのまま相続登記をせずに実家には母親が済んでいました。

 

いよいよ母親が死亡して実家の処分をどうしようかと子供たち3人で話し合いをするケースがよくあります。

 

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預貯金や株式などとは異なり、不動産の価格は一般の人には算定しづらいといえます。

今回は不動産を相続した場合に不動産の価格を早めに知ったほうが良いケースについてお話させていただきます。


不動産の価格とは

まず、大前提として不動産の価格についてお話させていただきます。

不動産の価格には固定資産税の根拠となる価格、相続税の根拠となる価格、そして不動産売買の根拠となる価格があります。

この3つの価格のうち相続手続きについて知るべき価格は①相続税申告に必要な路線価から算出する価格と②不動産売買に関する価格(いわゆる時価)です。


不動産の価格を早めに知っておいたほうが良いケース①

不動産の価格を早めに知っておいたほうが良いケースの一つは相続税の申告が必要である、あるいは申告が必要になる可能性があるケースです。

相続税の申告は被相続人が亡くなられてから10か月以内と決まっています。

 

相続税の基礎控除=3000万円+相続人の数×600万円

 

上記の計算から求めて、遺産のトータルから見て基礎控除の範囲であるかどうか考える必要があります。

しかし、相続税の申告のうち不動産の価格については存在する不動産の地理的状況(公道から奥まったところにある土地など)や土地の形状(きれいに整形された土地ではなくきれいな四角になっていない土地)によって算出に慣れていなければ難しいケースもあります。

 

不動産をふくめた遺産総額でも明らかに基礎控除を超えないというのであるなら大丈夫ですが、少し判定が難しいケースなどは早めに税理士などの専門家に不動産の評価をしてもらうことをお勧めします。

 

不動産の価格を早めに知っておいたほうが良いケース②

不動産の価格を早めに知っておいたほうが良いケースの二つ目として、相続人がすべて遠方に居住していて相続した不動産に住むことがないケースです。

この場合、空き家となってしまい、メンテナンスや維持管理、税金などにお金がかかるだけではなく、空き家にしておくと不動産の痛みがはげしくなりやすく、所有する期間がながくなればなるほど、資産価値も下がりやすくなり、また維持管理の精神的、金銭的負担が増えていきます。

 

確かに、自分たちが長年育ってきた実家というものは愛着もあるでしょうし、亡くなった両親に悪いという思いもあるでしょうから可能な限りそのまま残しておきたいという思いもわかります。

しかし、最終的に活用する術がないのであれば不動産は「負の遺産」になってしまいがちです。

活用する術が見つからないというのであれば、売却することも視野に入れてまずは不動産の「時価」を知っておくことも相続手続きについては必要です。

 

このような場合にはぜひとも数社の不動産会社に相談し、査定をして不動産の価格を教えてもらいましょう。

査定は無料でしてくれるケースがほとんどですのでお気軽にご相談ください。