不動産をお持ちの方の相続について~日本の現状から考える~

皆さん、ご自身の財産における不動産の割合はどれくらいでしょうか?

 

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日本人の資産割合つについて

 

日本人の遺産の約4割が不動産であるというデータがあります。

実際に令和2年12月に国税庁が発表した資料によりますと相続税の申告があった人の相続財産の金額構成比の推移は以下の通りとなります。

 

平成27年 (2015年)

不動産 43.3% 現金・預貯金等 30.7% 有価証券 14.9% その他 11.0%

 

平成28年 (2016年) 

不動産 43.5% 現金・預貯金等 31.2% 有価証券 14.4% その他 10.9%

 

平成29年 (2017年) 

不動産 41.9% 現金・預貯金等 31.7% 有価証券 15.2% その他 11.2%

 

平成30年 (2018年) 

不動産 40.4% 現金・預貯金等 32.3% 有価証券 16.0% その他 11.3%

 

平成30年 (2018年) 

不動産 39.6% 現金・預貯金等 33.7% 有価証券 15.2% その他 11.5%

 

相続税の申告があった人をベースに数値を出していますので、相続税の申告が必要でなかった人、つまり基礎控除(3000万円+法定相続人数×600万円)の範囲内の人であったらもっと多いといえます。

相続税の期限と納付

 

相続税の申告及び納税の期限は亡くなってから10か月以内です。

 

この間に様々な死亡手続きをしながら遺産や相続人の特定、遺産の評価、税額の算出、遺産分割協議などを進めていかなければなりません。

 

そして、相続税の納付は原則として現金で納付しなければなりません。

 

物納という手段もあるのはあるのですが、そもそも物納を認められる不動産は、抵当権などの担保権が設定されていない、土地の境界が確定している、借地権設定していない、権利の帰属について争いがない、耐用年数を経過していない、など数々の条件をクリアしていかなければなりません。

 

不動産の売却にかかる期間

 

また、不動産を売却しようとして不動産会社と媒介契約を結び、実際に売却できる、つまり手元にお金が入るまでの期間は平均して4~8か月と言われます。

 

確かに、いい物件はすぐにうれますが、あまりよくない不動産はただでも引き取り手がいないという状況にあります。

 

平成29年度の不動産の指定流通機構の新規売却登録件数が1,621,702件であるのに対し、同年の売り物件成約報告件数は179,289件と11%程度の数字しかあがっていません。

 

この数字だけをみるならば、売ろうと思った人の11%しか売ることができなかったというようにみえてしまいますが、実際はそういうわけではありません。

 

このような指定流通機構に掲載しないこともありますし、成約の報告を怠っていることもあります。

 

ですので、この数字だけで悲観的になる必要はありませんが、単純にすぐに売れるものではないということの認識をお持ちいただきたいと思います。

 

まとめ

 

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つまり、何が言いたいかと言いますと、ご自身が亡くなった際に相続税がかかる方についてはきちんと今の間から不動産を売却し納税資金を現金で確保するということや、あるいは、生命保険など容易に現金化できるもので納税資金を準備しておく必要があるということです。

 

何にせよ事前の準備を入念にしておくことが一番大切です。

 

 

清算型遺言がのこされていたら

遺言がのこっていてそれが清算型遺言の場合どのように手続きを進めていけばいいでしょうか。

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清算型遺言とは

文字通り遺産を清算してお金に換えてそれを分配するように記載された遺言のことです。

 

通常、遺言といえば「だれに何を残す」とか持分とかを指定したりするわけですが、この清算型遺言は「遺産を売却してお金に換える」ということまで指示していることが特徴です。

 

そして、清算型遺言の場合には遺言執行者が選任されているケースが多々あります。

 

遺言執行者とは遺言者の死亡後に遺言の内容を実現するために相続人全員の代理人となる方です。遺言執行者は遺言者が遺言の中で指定しているケースもありますし、遺言の中で指定されていなかった場合には遺言者の死亡後、家庭裁判所により選任してもらうことも可能です。

 

遺言執行者が選任されている場合、相続人の代理人として法的に認められるために相続人の手を煩わせることなく遺言執行者が手続きを進めていくことができます。

 

不動産の売却

遺言の中で「不動産は売却、換価しその売却代金から諸経費を差し引いた額をA、Bで各2分の1の割合で相続させる」などといった記載がある場合が今回の清算型遺言のケースにあてはまります。

 

遺言の中で遺言執行者として弁護士が選任されていた場合、遺言者は遺言者の死亡後、その指定された遺言の内容の通り不動産を売却してお金を分配する手続きを進めることができます。

 

あくまで所有者は相続人となるわけですのでけして所有権が弁護士などの遺言執行者のてにわたるわけではありません。

 

遺言執行者は相続人の代理人として、まず法務局に相続人全員名義に変更するよう登記申請をすることができます。

 

さらに、不動産会社と媒介契約の締結、買主がみつかれば買主との売買契約、さらに登記名義を相続人から新しい買主に変更するという登記手続きも相続人全員を代理することができます。

 

そして、最終的に売買価格から諸経費等を差し引いた金額を遺言の記載の通りに相続人などへ分配していくこととなります。

 

このように遺言執行者が選任されている清算型遺言の場合、すべての手続きを遺言執行者が行うことができます。

 

相続人はただ遺言執行者に手続きを任せておればよいので煩わしい手続きから解放されます。

 

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清算型遺言を残されている遺言者は少なく、また、まだ遺言をのこされているという方のほうが少ないでしょう。

 

ご自身が相続人になるということは一生でもなかなかあるものではありません。

 

ただ、終活の一環として遺言を考える場合にはこのような清算型遺言をのこしておいてお金にかえて分配しなさいという意思を相続人に伝えることもよいのではないでしょうか。

ローンが残ってる物件は相続したほうが良い?

不動産投資がかなり身近になっています。

 

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あなたも大家業で不労所得を」など耳障りのいい言葉を聞きますが実際のところはどうなのでしょうか。

 

投資用不動産をローンで購入→所有者の方が死亡→相続が発生という流れが今後増えてくるでしょう。

 

皆様がローンが残った不動産を相続した場合どうするべきか一緒に考えてみましょう。

 

 

相続が発生したら

相続が発生したらまず一番大切なのは相続人の確定と相続財産の調査です。

相続財産はプラスの財産とマイナスの財産をきちんと把握すること、特に不動産については法務局で登記事項証明書を取得し抵当権等の担保権がついていないか確認することが必要です。

 

通常の住宅ローンでは団体信用生命保険いわゆる団信と呼ばれるものに加入していれば所有者の方が死亡した場合には残債務が保険金にて返済されるという制度がありますが、不動産投資ローンの場合にはそのような保険に加入していないケースも考えられます。

 

債務(負債)についても相続人に相続されますので、プラスの財産を取得するのであるならば等しくマイナスの財産についても相続することになります。

 

まずは、プラスの財産とマイナスの財産を比べて債務を返済できるめどがあるのかを考えましょう。

 

貸す?売る?

実際に残債務の計算ができた場合、ローンの返済が収益物件の収益の上でまだ返済できるかどうかを確認しましょう。

 

物件によってはなかなか借主がつかない物件もあるのは事実です。

相続発生時現在ですでに入居中で借主がいればいいのですが、そうでもないケースもあるでしょう。

 

そのような場合、ローンの月々返済額以下でもいいので賃貸にまわすか、いっそ売却するかという判断になってきます。

 

収益構造が破綻している賃貸業であれば早々に処分してくということも視野に入れなければなりません。

 

しかし、いざ売却するとしてもローンの残債務をまかなえるほどの価格で買主が見つかればいいのですが、実際のところ所有物件を購入した時期や、物件の所在地などで、売却しても残債務が残る可能性も多々ありえます。

 

この段階の不動産はまさしく所有し続けることが「負の遺産」になってしまいます。固定資産税などの税金や修繕費や管理費にも日々コストはかかっていくからです。

 

少しでもローンの返済を減らすためにも早々に売却して残債務を支払っていくということを決心して少しでも痛みがすくないうちに撤退することも視野に入れて検討しましょう。

 

最終的にまったく採算が合わないというのであるならば相続放棄という手段もありますが、そこまでいくとすべての遺産を取得することができなくなりますので、相続放棄という手段は最後の最後までとっておいたほうが良いです。

 

なぜなら不動産の価値は一般人には非常にわかりづらいからです。実際の流通乗せてしまうまでわからないというのが現実です。

 

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ですので、今回のように不動産にローンが残っている場合にはまずは、信頼できる不動産の専門家にご相談されることをおすすめします。

相続した不動産を共有にした時の問題点

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親が所有していた実家を相続するというケースが多々あります。

例えば、今まで母親が住んでいましたが、母親もなくなり実家の処分をどうするかということで、とりあえずは兄弟の二人で法定相続分通り2分の1ずつ相続したとします。

 

とても単純な話で、法定相続分通りの相続となりますから何も禍根を残さないように思えます。

 

しかし、実はことはそこまで単純ではないのです。

 

今回は不動産の「共有に潜む罠」についてお話をさせていただきます。

 

共有とは

共有とは、所有権などの権利が複数人の所有あるいは、利用されている状態のことをいいます。そして、共有関係にある者のことを共有者といます。

 

そして、各共有者は「共有物の全部」を使用することができます(民法第249条)。

 

つまり、上記の例で兄弟二人が2分の1ずつ相続したという共有状態であっても、兄が家屋あるいは、土地の半分だけしか使えないというわけではなく、土地・建物の全体について使用することができるということです。

 

そう考えると、共有状態でも何の問題もないように思えます。

 

共有の落とし穴

しかし、民法第251条によると「共有物の変更・処分を行うには共有者全員の同意や判断が必要」とされています。

 

もう少し詳しく説明します。

 

例えば建物の大規模な改修工事を行ったり、建て替えたり、土地を宅地造成したり、盛り土をするなど、物理的な変更を加える場合、売却や処分、賃貸(短期間のものを除く)などの一切の取引行為には民法第251条により、手続きにおいて他の共有者全員の同意を得ることが必要となっています。

 

つまり、兄弟共有で相続した不動産をいざ売却や賃貸に出そうとしても全員の同意が必要となるということです。

 

その結果として、共有者の中でそれらの変更・処分などの条件に同意しない人が1人でもいた場合、それらを行うことができなくなります。

 

例えば、兄弟二人だからといって安易に共有状態にしたとしてもそれ以前に実家を今後どういう風にする予定なのかということを事前にしっかりと話し合っていなければ兄弟間で齟齬が生じる恐れがあります。

 

実際の事例

先ほどのご兄弟の事例ですが、長男さんは遠方に住んでいて、二男さんが親の実家に比較的近いところに住んでいました。

 

相続で取得した後に実家に近い、ただ、近いといっても車で1時間弱の距離に住んでいました。実家の整理などは弟夫婦が兄より近いということで休日に行っていました。

 

しかし、兄は弟に依頼するだけで全く協力的ではありません。固定資産税も当然折半のわりに実際の管理や手入れは弟夫婦が行うということになっていってしまいました。

 

弟夫婦は持ち家であり実家はもう処分したいと考えていましたが、兄は5年後定年したら実家に住もうと考えているようです。

 

実家の管理に負担を抱えた弟は兄に売却をしたいと相談しましたが兄は「大切な実家を他人のものにするなんて何を考えているんだ」と売却に応じてもらえず、しぶしぶと管理だけを現在も継続しています。

 

今回のケースでは最初から実家の処分管理について相続人間で話し合いをもたずに安易に法定相続分通りに相続した結果から弟側は不満を抱えることになりました。

 

このように、共有状態では共有者全員に負担が均等にいけばいいのですが、兄弟間という間柄なかなかなうまくいかないケースも出てきます。

 

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まずは、遺産を今後どうしたいのか相続人間でお話し合いをしっかりとしていただくことをおすすめします。

 

認知症の方の不動産の売却手続き~高齢者の親の自宅を売却したい~

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高齢になった親の施設の入居費用や介護療養費をねん出するために親の自宅を売却したいというご相談を受けることがよくあります。

 

また、親がすでに施設に入所しているので実家が不要になり、介護費用のためにも実家を売却したいという相談もよくうけます。

 

高齢の親御さんに判断能力が備わっていれば問題ありませんが、認知症などで判断能力がなくなってしまっている場合、手続きには家庭裁判所の関与が必要になってきますのでご注意が必要です。

 

認知症の方の売却手続き① 成年後見手続き

 

認知症の方が不動産を売却するためには成年後見手続きが必要となります。

 

家庭裁判所に親の成年後見人の選任の申し立てをし、成年後見人等の選任をしてもらい、成年後見人等が売却の手続きをすることになります。

 

そもそも、成年後見制度は認知症などで財産管理ができなくなった人にかわって財産管理をする人を家庭裁判所が決定する制度です。

ですので、たとえ実の子であろうとも勝手に親の財産を処分することができなくなってしまいます。

 

成年後見人に誰がなるのかはご親族の方からしたら非常に大きな問題となりますが、不動産などの財産があり、それを売却する必要があるなどの場合にはおおむね弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人等になる可能性が高くなります。

 

専門家の方にきちんと相談し、なぜ売却する必要があるのかを説明する必要があります。

 

認知症の方の売却手続き② 居住用不動産処分の許可

 

成年後見人等が選任されていても大きな財産の処分には家庭裁判所の許可が必要となります。

 

特に、もともと住んでいた自宅などを売却する際には「居住用不動産処分の許可」の申し立てを家庭裁判所にする必要があります。

 

居住用不動産処分の許可には具体的に誰に、いくらの金額で売却するかまで決定している必要があり、その売買契約書(案)あるいは、家庭裁判所の許可がでることを条件とした売買契約書を家庭裁判所に提出する必要があります。

 

家庭裁判所は認知症となって財産管理受けている本人の財産状況や不動産を処分しなければならない理由、本人の身体療養状況、今後の住まいが確保できているか、不動産は不当に安くはなく適正な価格で売却されるのかなどトータルで判断し売却の許可を出すか出さないかを決定します。

 

誰にいくらで売却するかが重要ですので、売買価格や買主が変更になった場合には原則として売却の許可を取り直さなければなりません。

 

まとめ

 

以上のように、認知症の方の不動産を処分するには家庭裁判所で手続きが必要となり、売却が完了するまでにも数か月はかかります。

 

ですので、現金化を急ぐのであるならいち早く専門家に相談し、成年後見手続きを進めていくことをお勧めします。