高齢者の相続問題

日本人の高齢化に伴い、相続にも高齢化問題が発生しています。

 

 

特に未婚や離婚、出生率の低下とともに兄弟姉妹が相続人になると相続人の高齢化が顕著となります。

 

88歳の方がなくなって、子どもがいない、当然両親もすでに亡くなっている。そうなると相続人は亡くなった方の兄弟姉妹となります。88歳の方の兄弟姉妹となると当然のことながら皆様高齢者となります。

 

そのような際には相続人の中に認知症の方がいらっしゃる場合があります。

 

認知症といっても一概にいうことはできませんが、軽度の認知症で判断能力があれば問題はないのですが、判断能力がなくなれば成年後見制度を利用する必要があります。

また、認知症ではなくても脳梗塞等で意思表示をすることができない場合もあります。

 

いずれにしても高齢者の相続人がいる場合は成年後見制度を利用する必要があるケースが出てくる可能性が高いと言えます。

 

相続人の中に成年被後見人がいたら

相続人の中に判断能力がない方がいた場合、家庭裁判所に成年後見人選任の申し立てをする必要があります。

 

判断能力がない人にかわり、財産管理、遺産分割協議等を行ってもらう必要があるからです。

 

また、成年後見人が就任した場合、成年後見人は原則として本人の財産を減少させることはできませんので、少なくとも法定相続分を確保する必要があります。

 

不動産をほかの相続人が取得する場合には預貯金等で、預貯金等が相続分を確保することができるほど十分にない場合は、不動産を取得した相続人から代償金などで相続分を確保する必要があります。

 

遺産分割協議

遺産分割協議がととのったら、その内容を遺産分割協議書に記載し、相続人全員が遺産分割協議書に署名および実印で押捺します。

 

成年後見人が就任している相続人は成年後見人が相続人の代わりに署名し、成年後見人の実印を押捺します。

 

相続は亡くなった人の家庭事情や財産状況等によってスムーズに相続手続きが進む場合もあれば、そうでない場合もあります。

 

独居老人で、何十年も親族と連絡を取っていないという場合もあります。

ある日突然、何年も連絡を取っていない親族の相続人になる可能性がないとは言えません。

今後、日本の高齢化、未婚率の上昇、出生率の低下などの社会構造を考えると、相続人が高齢者の兄弟姉妹であるという事例が増加していくことが考えられます。

 

また、遺産としてのこるのは不動産や預貯金などのプラスの財産だけではなく、負債なども相続されるケースもありえます。

 

遺言を残すなど法律だけの問題ではなく、親族仲良く、誰にどのように面倒をみてもらうのかという人と人とのつながりも重要になってくるのではないでしょうか。

遺産分割協議の前にはぜひ査定を

遺産のうち4割近くが不動産であるという国税庁の統計が発表されています。

 

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遺言を残しているか否かを問わず、不動産を相続するのであるならば一番最初に知っておくべきことがあります。

 

それが不動産の時価です。

 

不動産の価格と

 

土地の価格には以下のものがあります。

 

①固定資産税評価額

②路線価

③公示価格

④実勢価格

 

①から③の価格をもとに算出した売り出し価格をもとに実際に市場に出て成約した、つまり売れた金額が実勢価格、つまり時価となります。

 

なぜ時価が必要か

 

遺産分割協議をするにしても法定相続で共有状態にするにしてもいずれにしても相続する財産の価値を知っておくことはとても重要です。

 

財布の中身の紙幣の価値を知っていないことと同義だからです。

 

さらに遺産分割協議をする際には不動産をもらう側も、不動産ももらわない側もきちんとした価格をしっておくべきです。

 

上記の4つの不動産の価額で一番皆様になじみがあるのが固定資産税評価額だと思います。

 

しかし一般的に固定資産税評価額は時価の7割程度だと言われています。

 

7割程度の土地の価格をもとに均等になるように遺産分割協議をしようとしても不動産をもらえない側は預貯金などでの補填の金額が少なくなってしまいます。

 

反対に土地をもらう側の人も注意が必要です。

道路との接道が悪いような土地では固定資産税評価額より実際の価格が低くなることもよくあるからです。

 

代償分割の場合

 

遺産分割協議の方法の一つに代償分割という方法があります。

 

遺産の全部または一部をある相続人がもらうかわりに、不足した分のお金を遺産の分配ではなく、もらう側の相続人の財産から支払うという方法です。

 

例えば長男が不動産を相続し長女が預貯金を相続するという話で協議がまとまりますが、不動産の価格と預貯金の価格の均等が取れない場合など、長男、長女間の不均衡をなくすために、不足分を長男の自分の貯金から支払うという場合です。

 

このような場合には前提として不動産の時価を知っておく必要があります。

 

そのためには時価を知るためにも不動産会社などに査定をしていただくことがおすすめです。裁判などにも発展することがあれば不動産鑑定士のような専門家の鑑定書なども必要となるケースもあります。

 

相続人間で時価の金額について争いがないように、3~5社など複数の査定書を出していただくようにすることもおすすめです。

 

不動産をもらう側の相続人は査定を低く見積もってもらったほうが得ですし、不動産をもらえない側の相続人は不動産を高く見積もってもらった方が得になりますので、相対し話がまとまらなくなる可能性があるからです。

 

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いずれにしても遺産分割協議をするにはぜひとも客観的評価の基準として不動産の査定をしていただくことをおすすめします。

 

不動産をお持ちの方の相続について~日本の現状から考える~

皆さん、ご自身の財産における不動産の割合はどれくらいでしょうか?

 

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日本人の資産割合つについて

 

日本人の遺産の約4割が不動産であるというデータがあります。

実際に令和2年12月に国税庁が発表した資料によりますと相続税の申告があった人の相続財産の金額構成比の推移は以下の通りとなります。

 

平成27年 (2015年)

不動産 43.3% 現金・預貯金等 30.7% 有価証券 14.9% その他 11.0%

 

平成28年 (2016年) 

不動産 43.5% 現金・預貯金等 31.2% 有価証券 14.4% その他 10.9%

 

平成29年 (2017年) 

不動産 41.9% 現金・預貯金等 31.7% 有価証券 15.2% その他 11.2%

 

平成30年 (2018年) 

不動産 40.4% 現金・預貯金等 32.3% 有価証券 16.0% その他 11.3%

 

平成30年 (2018年) 

不動産 39.6% 現金・預貯金等 33.7% 有価証券 15.2% その他 11.5%

 

相続税の申告があった人をベースに数値を出していますので、相続税の申告が必要でなかった人、つまり基礎控除(3000万円+法定相続人数×600万円)の範囲内の人であったらもっと多いといえます。

相続税の期限と納付

 

相続税の申告及び納税の期限は亡くなってから10か月以内です。

 

この間に様々な死亡手続きをしながら遺産や相続人の特定、遺産の評価、税額の算出、遺産分割協議などを進めていかなければなりません。

 

そして、相続税の納付は原則として現金で納付しなければなりません。

 

物納という手段もあるのはあるのですが、そもそも物納を認められる不動産は、抵当権などの担保権が設定されていない、土地の境界が確定している、借地権設定していない、権利の帰属について争いがない、耐用年数を経過していない、など数々の条件をクリアしていかなければなりません。

 

不動産の売却にかかる期間

 

また、不動産を売却しようとして不動産会社と媒介契約を結び、実際に売却できる、つまり手元にお金が入るまでの期間は平均して4~8か月と言われます。

 

確かに、いい物件はすぐにうれますが、あまりよくない不動産はただでも引き取り手がいないという状況にあります。

 

平成29年度の不動産の指定流通機構の新規売却登録件数が1,621,702件であるのに対し、同年の売り物件成約報告件数は179,289件と11%程度の数字しかあがっていません。

 

この数字だけをみるならば、売ろうと思った人の11%しか売ることができなかったというようにみえてしまいますが、実際はそういうわけではありません。

 

このような指定流通機構に掲載しないこともありますし、成約の報告を怠っていることもあります。

 

ですので、この数字だけで悲観的になる必要はありませんが、単純にすぐに売れるものではないということの認識をお持ちいただきたいと思います。

 

まとめ

 

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つまり、何が言いたいかと言いますと、ご自身が亡くなった際に相続税がかかる方についてはきちんと今の間から不動産を売却し納税資金を現金で確保するということや、あるいは、生命保険など容易に現金化できるもので納税資金を準備しておく必要があるということです。

 

何にせよ事前の準備を入念にしておくことが一番大切です。

 

 

清算型遺言がのこされていたら

遺言がのこっていてそれが清算型遺言の場合どのように手続きを進めていけばいいでしょうか。

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清算型遺言とは

文字通り遺産を清算してお金に換えてそれを分配するように記載された遺言のことです。

 

通常、遺言といえば「だれに何を残す」とか持分とかを指定したりするわけですが、この清算型遺言は「遺産を売却してお金に換える」ということまで指示していることが特徴です。

 

そして、清算型遺言の場合には遺言執行者が選任されているケースが多々あります。

 

遺言執行者とは遺言者の死亡後に遺言の内容を実現するために相続人全員の代理人となる方です。遺言執行者は遺言者が遺言の中で指定しているケースもありますし、遺言の中で指定されていなかった場合には遺言者の死亡後、家庭裁判所により選任してもらうことも可能です。

 

遺言執行者が選任されている場合、相続人の代理人として法的に認められるために相続人の手を煩わせることなく遺言執行者が手続きを進めていくことができます。

 

不動産の売却

遺言の中で「不動産は売却、換価しその売却代金から諸経費を差し引いた額をA、Bで各2分の1の割合で相続させる」などといった記載がある場合が今回の清算型遺言のケースにあてはまります。

 

遺言の中で遺言執行者として弁護士が選任されていた場合、遺言者は遺言者の死亡後、その指定された遺言の内容の通り不動産を売却してお金を分配する手続きを進めることができます。

 

あくまで所有者は相続人となるわけですのでけして所有権が弁護士などの遺言執行者のてにわたるわけではありません。

 

遺言執行者は相続人の代理人として、まず法務局に相続人全員名義に変更するよう登記申請をすることができます。

 

さらに、不動産会社と媒介契約の締結、買主がみつかれば買主との売買契約、さらに登記名義を相続人から新しい買主に変更するという登記手続きも相続人全員を代理することができます。

 

そして、最終的に売買価格から諸経費等を差し引いた金額を遺言の記載の通りに相続人などへ分配していくこととなります。

 

このように遺言執行者が選任されている清算型遺言の場合、すべての手続きを遺言執行者が行うことができます。

 

相続人はただ遺言執行者に手続きを任せておればよいので煩わしい手続きから解放されます。

 

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清算型遺言を残されている遺言者は少なく、また、まだ遺言をのこされているという方のほうが少ないでしょう。

 

ご自身が相続人になるということは一生でもなかなかあるものではありません。

 

ただ、終活の一環として遺言を考える場合にはこのような清算型遺言をのこしておいてお金にかえて分配しなさいという意思を相続人に伝えることもよいのではないでしょうか。

ローンが残ってる物件は相続したほうが良い?

不動産投資がかなり身近になっています。

 

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あなたも大家業で不労所得を」など耳障りのいい言葉を聞きますが実際のところはどうなのでしょうか。

 

投資用不動産をローンで購入→所有者の方が死亡→相続が発生という流れが今後増えてくるでしょう。

 

皆様がローンが残った不動産を相続した場合どうするべきか一緒に考えてみましょう。

 

 

相続が発生したら

相続が発生したらまず一番大切なのは相続人の確定と相続財産の調査です。

相続財産はプラスの財産とマイナスの財産をきちんと把握すること、特に不動産については法務局で登記事項証明書を取得し抵当権等の担保権がついていないか確認することが必要です。

 

通常の住宅ローンでは団体信用生命保険いわゆる団信と呼ばれるものに加入していれば所有者の方が死亡した場合には残債務が保険金にて返済されるという制度がありますが、不動産投資ローンの場合にはそのような保険に加入していないケースも考えられます。

 

債務(負債)についても相続人に相続されますので、プラスの財産を取得するのであるならば等しくマイナスの財産についても相続することになります。

 

まずは、プラスの財産とマイナスの財産を比べて債務を返済できるめどがあるのかを考えましょう。

 

貸す?売る?

実際に残債務の計算ができた場合、ローンの返済が収益物件の収益の上でまだ返済できるかどうかを確認しましょう。

 

物件によってはなかなか借主がつかない物件もあるのは事実です。

相続発生時現在ですでに入居中で借主がいればいいのですが、そうでもないケースもあるでしょう。

 

そのような場合、ローンの月々返済額以下でもいいので賃貸にまわすか、いっそ売却するかという判断になってきます。

 

収益構造が破綻している賃貸業であれば早々に処分してくということも視野に入れなければなりません。

 

しかし、いざ売却するとしてもローンの残債務をまかなえるほどの価格で買主が見つかればいいのですが、実際のところ所有物件を購入した時期や、物件の所在地などで、売却しても残債務が残る可能性も多々ありえます。

 

この段階の不動産はまさしく所有し続けることが「負の遺産」になってしまいます。固定資産税などの税金や修繕費や管理費にも日々コストはかかっていくからです。

 

少しでもローンの返済を減らすためにも早々に売却して残債務を支払っていくということを決心して少しでも痛みがすくないうちに撤退することも視野に入れて検討しましょう。

 

最終的にまったく採算が合わないというのであるならば相続放棄という手段もありますが、そこまでいくとすべての遺産を取得することができなくなりますので、相続放棄という手段は最後の最後までとっておいたほうが良いです。

 

なぜなら不動産の価値は一般人には非常にわかりづらいからです。実際の流通乗せてしまうまでわからないというのが現実です。

 

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ですので、今回のように不動産にローンが残っている場合にはまずは、信頼できる不動産の専門家にご相談されることをおすすめします。