両親が死亡してしまったり、施設へ入所することになってしまったりして、実家が空き家になってしまったらもったいないですよね。
もしも実家を相続することが決まっているのであれば、相続前に売却してしまったほうが良いのではないか?
と考える方は意外と多いのではないでしょうか。
相続前に実家を売却してしまったほうが良いかどうかは、正直なところケースバイケースです。
ただ、相続前に売却をするということであれば、建物の所有者は当然にご両親のどちらかです。
ご両親が建物を売却して得た資金を相続前にもらうのか、亡くなったあとに相続するのか。によっても異なりますよね。
そこで今回は、空き家となってしまった建物をどのタイミングで売却するのが良いのか?について紹介します。
空き家の売却に関わる税金
まずは、不動産の売却に関わる税金について見ていきましょう。
不動産の売却によって利益が発生すれば、譲渡所得としての税金が課税されます。
建物の所有期間によっても税率が変わってきますが、所有期間が5年以下で39.63%です。
5年超の所有期間であっても20.315%の所得税・住民税が発生します。
売却益は取得費用や諸経費などを差し引けるため、あくまでも“利益”についてのみ税金が発生します。
生前に売却した場合
所有者が生前に建物を売却したとしても現金は所有者へ支払われます。
そのため、譲渡損益に応じて所得税や住民税を支払えば課税関係は終了しますよね。
ただ、建物の所有者が受け取った現金を生前に受け取るのであれば、受け取った人物は贈与税という税金を支払わなければいけません。
贈与税は1月1日から12月31日までの1年間のあいだで贈与された資産に対して課税されます。
控除額は110万円ですから、110万円を超えた部分について税金が発生します。
ただし、相続時精算課税制度の利用条件を満たしていれば、2,500万円までの贈与税が非課税です。
所有者の死後に相続した場合
所有者の死後に建物を相続し、相続人が建物を売却した場合には、所得税や住民税の他に相続税が発生します。
また、建物の所有者(両親)が生前に建物を売却し、現金を相続した場合にも相続税が発生します。
相続税の税率
画像出典︰国税庁/相続税の税率
相続前に売却をすれば良いのかどうかは、どちらのほうが控除額が高いか?によっても異なるんですね。
次にそれぞれの特別控除について見ていきましょう。
建物売却や相続に関わる特別控除
まずは、生前に建物を売却する際の特別控除について見ていきましょう。
今回は、実家が何らかの理由で空き家になったケースで確認します。
実家はマイホーム(居住用財産)に該当しますから、所有期間に関わらず最高で3,000万円の特別控除を受けられます。
例えば諸経費込みの取得費用1億円の物件を1.5億円で売却し、売却するために支払った諸経費を100万円とします。
1.5億円-(1億円+100万円)-3,000万円=1,900万円
実際に受け取った金額は1.5億円でも、課税所得は1,900万円ですので、メリットは大きいですね。
なお、マイホームを売ったときの特例を受けるためには要件を満たさなければいけません。
該当物件相続後に、マイホームを売ったときの特例を受けるためだけに、住んでも適用は受けられません。
つまり、生前に建物を売却しなければ、マイホームを売ったときの特例を受けられないということです。
では、相続後に建物を売却した際の特別控除について見ていきましょう。
建物の相続に関して受けられる特別控除は“小規模宅地等の特例”です。
小規模宅地等の特例では、厳しい要件を満たす必要がありますが、要件を満たせれば最大で評価額を80%カットできます。
つまり、マイホームを売ったときの特例のほうが良いか?小規模宅地等の特例のほうが良いか?
どちらの控除額のほうが大きいのかによって、売却のタイミングが異なります。
まとめ
今回は、実家が空き家になってしまったら、生前に売却したほうが良いのか、相続後に売却したほうが良いのか?について紹介しました。
結果として、マイホームを売ったときの特例か小規模宅地等の特例どちらを受けたほうが良いか?という違いでしたね。
ただ、不動産は住んでいなくとも当然に固定資産税という税金が発生します。
固定資産税とは?
土地や建物の不動産を所有していると、それだけで毎年かかる税金があります。
それが固定資産税です。
毎年4月~5月頃になると市役所から納税通知が来て、その金額を支払います。
引用:固定資産税はいつ支払う?
さらに、相続人が複数いて建物を相続した場合には、“争続”になりかねません。
建物を売却して相続人同士で分け合えれば良いですが、意見が食い違えば争いは避けられません。
まずは、建物の所有者である両親などとしっかりと話し合いを行い、どうするべきかどうしたら良いのかを決めておきましょう。
また、相続を争続にしないためにも、相続人同士でしっかりと話し合いを行っておくことも大切です。
被相続人については、遺言書の準備もしておきましょう。
また、争いを避ける意味で生前に建物を売却してしまうのもアリなのかもしれませんね。