遺言書は封をしていない状態でも有効?【その1】

遺品整理をしていると故人の遺言書が見つかることがあります。でも発見した遺言書が封をしていなかったらどうでしょうか。

 

見つけた遺言書が果たして法的に有効なのか、不安になるかもしれません。
また、場合によっては発見した遺言書をうっかり開けてしまって、あとから不安になるかもしれません。
このような遺言書は無効になってしまうのでしょうか。

 

今回と次回で、封をしていない遺言書が有効なのかどうか、また法的に効力のある遺言書の要件は何かを解説していきます。

 

遺言書は封をしていない状態でも有効

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遺言書は、多くの場合封印された状態で保管されています。内容の秘密を保つため、また変造や偽造を防ぐために、大抵の場合は封印されているわけです。

ですので、見つけた遺言書がもし封をしていなかったら、これは有効な遺言書なのかどうか不安になるかもしれません。

 

でも心配する必要はありません。封をしていない遺言書でも法的に有効なものとして認められます。

後で解説する法的に有効と認められる条件さえ満たしていれば遺言書は有効なのです。封印して保管することはその条件に含まれていません。

もちろん、秘密保持や偽造防止の観点からは封印するのがベストではあります。それでも、封印されていないことが原因で自動的に無効になるわけではないのです。

 

とはいえ、自筆証書遺言の場合は、封印されていないものでも家庭裁判所での検認手続きが必要です。
発見後はすみやかに裁判所に検認を申し出ましょう。

 

用紙や筆記用具のルールも特に定められてはいない

遺言書は封筒に入っておらず、紙切れ一枚、それもメモのようなものに書かれていたとしても、条件さえ満たしておけば有効なものと認められます。
極端な話ですが、手のひらサイズの小さなメモに鉛筆で書いた遺言書でも、それゆえに無効とはなりません。

 

遺言書は、民法で定められたルールに則って書かなければいけませが、そのルールに、遺言書の用紙やサイズ、筆記用具、封印の有無は含まれていないのです。

 

とはいえ、実際にあまりに極端な方法で遺言書を遺すと、相続人から遺言時の精神状態を疑われかねません。
また規定されてはいないとはいえ、実際に鉛筆などで書いてしまうと、後で読み取れなかったり、改ざんの恐れもあるので絶対に避けましょう。


すでに開封されている遺言も有効

では、もし発見した遺言書がすでに開封されていたらどうでしょうか。

明らかに元々は封印されていたのになぜか開封されている、というケースもあるかもしれません。
もしくは、発見者がうっかり遺言書を開けてしまった、ということもあり得るでしょう。

 

実はこの場合でも、遺言書の効力に変わりはありません。開封されている遺言書も無効にはならないのです。

もし、開封された遺言書が自動的に無効となるのであれば、わざと遺言書を開封しようとする人も出てくるかもしれません。開封して自分に不利な内容であろう遺言書を無効にしようとするかもしれないわけです。

 

このようなことから、遺言書が開封されていても直ちに無効とはなりません。開封された遺言書を見つけた場合も速やかに家庭裁判所の検認手続きを申し出るようにしましょう。

 

遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿は重大なペナルティ

もし、開封済みの遺言書を見つけた発見者が、その内容が自分に不利だったために隠したり捨ててしまった場合はどうでしょうか。

この場合は、重大なペナルティが科せられることになります。遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿した場合は、相続欠格といって相続人の権利を失う、と民法で定められています。

 

遺言書を勝手に開封すると5万円以下の罰金

開封済みの遺言書も有効であるとはいえ、遺言書は発見者が勝手に開封して良いというわけではありません。

 

民法1004条では、自筆遺言証書と秘密証書遺言に関して勝手に開封してはいけないと定められています。家庭裁判所で検認をして、相続人全員かその代理人の立ち合いのもとで開封しなければいけないのです。
もしこれを破ると5万円以下の過料(罰金)が科せられる可能性があります。

 

たとえ相続人全員の同意があっても、自分たちで勝手に開封してはいけません。

 

うっかり開けてしまった場合でも検認が必要

では、遺言書を見つけたときにうっかり開けてしまった場合はどうでしょうか。

実のところ、5万円以下の過料(罰金)が実際に科せられるのは大変まれなケースです。うっかり開けてしまった場合でも落ち着いて対処するようにしましょう。

 

決して再びのり付けしようなどとしてはいけません。開封した遺言書も依然として法的に有効なので、速やかに裁判所に持って行って検認手続きをするようにしましょう。

 

遺言書を作成するときは封筒に入れるのがおすすめ

では、遺族が遺言書を発見したときにうっかり開けてしまうリスクを無くすために、遺言書は封筒に入れない方が良いのでしょうか。

 

そうしておけば、遺族がうっかり開けてしまうこともないし罰金の心配をする必要もなく安心だ、と思われるかもしれません。

 

ですが、この方法はお勧めできません。法律で定められているわけではないとは言え、やはり遺言書は封筒に入れて保管するのがベストです。

 

封筒に入れていない状態だと、第三者や相続人の一人に遺言書の中身を見られてしまう可能性があります。
また、遺言書が封印されていないことが原因で、相続人間のトラブルを招いてしまう可能性もあります。
封印されていない状態の遺言書が発見者に有利な内容だと、他の相続人の不信感を招いてしまうかもしれません。
これは本当に遺言者が書いたものなのか、遺言者の意思を反映したものなのか、他の相続人が疑いの目で見てしまう可能性があるわけです。

 

封筒に入れて封印することでこうしたリスクを防ぐことできます。秘密保持が担保されますし、誰かに中身を改ざんされたり偽造されたりする心配もありません。


遺言書の封筒の書き方

では、実際に遺言書を封筒に入れて保管するときはどうすれば良いのでしょうか。

 

遺言書そのものにも用紙やサイズの規定がないわけですから、当然封筒のサイズや色にも特にルールは定められていません。
とはいえ、後々のリスクを減らすことを考えると、裏紙のあるタイプのものがオススメです。これなら中身が透けて見えてしまうことがありません。

 

封筒の表には「遺言書」や「遺言書在中」などと書いておくと良いでしょう。

 

裏には「本遺言書は、遺言者の死後、未開封のまま家庭裁判所に提出のこと」などと添え書きしておきます。
そして遺言書の作成年月日を書き、署名押印します。押印の印は遺言書に用いた印鑑を使います。

 

封筒の裏に記入することをまとめると以下のようになります。

  • 発見者に検認を促して、うっかり開封しないよう注意書きする
  • 遺言書の作成年月日と署名押印
  • 押印は遺言書に用いた印鑑で、署名の後とのり付けした部分の2か所

 

なお、封をするときは簡単にはがせないように、液体のりなどでしっかりとめておきましょう。