遺留分侵害をしないための不動産の価格の考え方

前回終活の一環として不動産の処分について考えるべきことをお話ししました。

 

ご自身の余生のために、例えば将来的な介護費用をねん出するために事前に不動産を現金化しておくこと、など考えることが第一ですが、遺された親族のためにも財産の正確な資産価値を把握しておくことはとても重要です。

 

今回はご自身が亡くなられた後の相続対策という点から不動産の価値を把握しておくことを考えてみましょう。

 

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不動産の価値??

ところで不動産の価値とは何なのでしょう?

 

毎年支払っている固定資産税なのでしょうか?

毎年発表される路線価なのでしょうか?

毎年発表される地価公示価格なのでしょうか?

不動産会社などがだしてくれる査定の価格?

実はこれはすべて価値として正しいのです。

 

何のための価値を出すのか?それにより使う価格が異なります。

 

遺言を作成する場合

例えばあなたが不動産を含めた財産についてお子様たちに遺言を作成しようとしました。

 

どうやら遺留分という権利がそれぞれ子ども達にはあるようで、それより少ない遺産を与えたら後々ややこしくなる可能性があると知りました。

 

銀行預金は通帳の金額を見ればわかりますので、ある程度把握しやすいですが、不動産はどうすればいいのでしょうか。

 

遺留分の算定の基礎となる不動産の価格についてはいわゆる「時価」が用いられます。

時価」というとお寿司屋さんなどをイメージしますが、その時々の値段ということです。

 

不動産の売買の価格なども一般的に時価に則って流通していることがほとんどです。

 

もっとも一時期のバブル景気のように急激な土地価格の上昇なども全くないとは言い切れませんが、おおむね不動産価格は一定なものです。

 

ですので、遺言を作成する場合は現在の時価を調べてある程度、価値が上昇あるいは下落することを見越して遺産の分配を決定することが必要となります。

 

不動産の時価とは?

不動産の時価というと不動産鑑定士に不動産鑑定書を作成してもらうことも可能です。ただ、鑑定書を作成してもらうためには数十万円費用がかかるのであまり現実的ではありません。

 

簡易に時価を知るためには多少お金はかかるかもしれませんが、不動産会社に査定書を作成してもらうことをお勧めします。

 

可能であれば数社からだしてもらい平均値を見ることでより信憑性のある不動産の価値を知ることができます。

 

不動産会社は上記の様々な価格や過去の取引事例を調べ、不動産の価格を設定します。

 

不動産の価格を知ったうえで、どのように子ども達に遺産を分配するのがいいのか考えるようにしてください。

 

それぞれの子どもたちに禍根を残さないことも、もちろん重要ですが、何よりも大切なのは「ご自身の気持ち」です。

 

禍根を残さないように最低限の手筈は取っておく必要はありますが、それだけに振り回されないように、最後の言葉を遺言として残していただきたく思います。

 

終活の一環として不動産をどう考えるか

最近、終活という言葉をよく聞きますね。

 

皆さんは終活というとどういうイメージを持っていますか?

自分がなくなった後のことばかりを考えていませんか?

 

「終活=遺言」とか「終活=相続」と思われがちですが実は終活の一番重要な部分は「いかにして自分らしく生きていくか」なのだと思います。

 

 

今回は終活の一環として不動産をどのように考えるべきなのか一緒に考えてみたいと思います。

 

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これからの生き方を考える

終活の中で一番重要なのはご自身が「どのように生きたいか」です。

家族や友人とのつながり、社会とのかかわり、趣味のこと、世界1周とまではいかないまでも日本の温泉地をめぐりたい、そのような今後の人生をまずイメージします。

 

そして、その中でその夢を達成するためにはどうするのか考えるのです。

 

ご自身の住居について時間をとって考えてみましょう。

 

持ち家?賃貸?

今の住まいは持ち家ですか?それとも賃貸ですか?

年を重ねて介護が必要になってくることも十分に考えられます。

今のご自宅にずっと住みたいのなら老後もより住みやすくリフォームすることも検討する必要があります。

 

そうではなく、サービス付き高齢者住宅などに元気なうちに住み替えを検討することも一つでしょう。

 

そのための資金を例えばご自宅を売却して捻出することも考えられます。

 

不動産が負の遺産

また、ご自身が亡くなられた後のご自宅はどういった形で相続してもらいたいでしょうか。

ただご自宅がプラスの遺産となればいいのですが、反対にマイナスの遺産にならないでしょうか?

 

長年住んでいたご自宅ですので愛着はあろうかと思います。ただ、立地や築年数によっては将来的に売却も難しい財産かもしれません。

 

そうなると不動産は負の遺産となってしまいます。

 

相続人それぞれが遠方に住んでいる場合など、空き家の管理にもお金がかかります。また、固定資産税も負担となるでしょう。

 

老朽化した家を取り壊すにしても数百万円かかってしまうケースもあります。

遺品などの整理にも専門の業者に頼むと数十万円かかってしまうケースもあります。

 

そのようなことがないように今の資産を棚卸し、必要であれば生前に処分しておくことも視野に入れるべきです。

 

今の適正な流通価格を知り相続財産に組み込むべきなのか、生前に処分しておくのか。

 

いずれにしてもご自身のライフスタイルから逆算して数年後、十数年後のことも考えることこそ、終活なのです。

 

 

一度、ご自身の今後の人生設計について一緒に考えてみませんか??

遺言書は封をしていない状態でも有効?【その2】

今回は前回からの続きで、遺言書は封をしていない状態でも有効かどうかについて解説をしたいと思います。

 

【種類別】遺言が有効と認められるための要件

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封印の有無は遺言が有効と認められるための要件ではありませんが、民法では遺言書の書き方にルールが定められています。
このルールに従って書かなければ法的に無効となってしまいます。

 

それでは、遺言書の種類別に有効と認められるための要件を解説していきます。

 

自筆証書遺言が認められるための要件

自筆証書遺言とは、全文を遺言者が自筆で書く方式です。

大前提として、全文を自筆で書かなければいけません。誰かに代筆してもらったりパソコンで書いたものは無効です。

また、自筆証書遺言が有効と認められるためには下記の要件を満たさなければいけません。

 

作成年月日、署名、押印が必須

作成年月日、署名、押印の3点セットは必須です。

他は完璧に要件を満たしていても、日付だけでも書き忘れてしまうと、遺言書そのものが無効になってしまいます。

日付は西暦でも元号でも、どちらでもかまいません。また数字も漢数字、算用数字、どちらでも問題ありません。

 

ちなみに「平成〇年誕生日」でも日付を特定できるので良いのですが、やはりトラブルを避けるため「〇年〇月〇日」と書いておいた方が良いでしょう。

押印も必須条件です。印鑑は認印でも構わないことになっていますが、やはり実印を使うのがベストでしょう。

 

加除訂正も定められた方法で行う

遺言書に加筆、削除、訂正する方法も民法第968条で次のように定められています。

「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」

 

加除訂正が定められた方式に従っていない場合は、その変更は無かったものとして扱われます。

 

  • 加筆は、加筆する場所に挿入する印をつけ加筆内容を書き、加入した位置に押印します。
  • 削除は、削除する部分を二重線で消して押印します。
  • 訂正は、訂正する部分を二重線で消して、変更する文言を書き入れ押印します。

 

さらに上記の変更した場所の上部欄外、もしくは遺言書の末尾に「この行参字加入」「本行弐字削除五字加入」などと変更した旨を付記して署名します。

このどれか一つでも欠けると変更はなかったものとなります。そこで、書き間違えた場合は最初から全文を書き直すのが最善でしょう。

 

財産目録はパソコンで作成しても良い

2019年の法改正で、遺言書の財産目録はパソコンで作成しても良いことになりました。また、目録でなくても不動産登記事項証明書や通帳のコピーの添付も可能です。

 

ただし、財産目録には偽造防止のために署名押印が必要です。また、財産目録以外の部分は全文自筆でなければいけません。

 

財産、相続人、受遺者を客観的に特定できるように書く

相続財産を記載するときは、客観的に特定できるように書かなければいけません。

「土地は長男、家屋は妻に相続させる」というようなあいまいな書き方ではダメです。

 

不動産の場合は、登記事項証明書、もしくは固定資産税台帳の記載通りに記載しましょう。預貯金も、金融機関の支店名、口座番号、名義などを記載します。

 

また財産を譲る相手もはっきりと特定できる形で記載する必要があります。
妻や子供の場合は「遺言者の妻○○に」「長男○○に」といった記載でも良いですが、法定相続人以外の受遺者に譲る場合は注意が必要です。

「遺言者の姪○○○○(昭和○○年○○月○○日出生)」「内縁の妻○○○○(本籍:○○、住所:○○○、昭和○○年○○月○○日出生)」のように記載します。

 

 

公正証書遺言が認められるための要件

公正証書遺言は、公証役場で公証人という法律のプロが作成する遺言書です。
遺言者が公証人と証人2人の立ち合いのもとで遺言内容を口述し、書類そのものは公証人が作成します。
それゆえに無効になる可能性が極めて低い安心、確実な方法です。

 

とはいえ、公正証書遺言が無効となったケースがないわけではありません。確実に有効な遺言書を作成するために下記に注意しましょう。

 

遺言者の意思能力がある状態で作成する

当然ながら遺言者は遺言作成時に正常な意思を持つ状態でなければいけません。逆に言えば心神喪失の状態ではいけないわけです。

 

公正証書遺言作成時は、公証人と証人2人の立ち合いのもとで作成するので、この点が問題になる可能性は極めて低いでしょう。
とはいえ、認知症の人が遺言書を作成する場合は注意が必要です。


民法では、成年被後見人でも本心に復したとき、つまり一時的でも意思能力があれば医師2人以上の立合いのもとで遺言ができるとされています。
その場合、医師は、当人が遺言時に心神喪失の状況では無かったと遺言書に付記し、署名・押印しなければなりません(民法973条)。

 

しかし、このような手順を踏んだとしても、場合によっては、一部の相続人から、認知症だった遺言者が正常な状態で遺言できるはずがない、と遺言無効確認訴訟が起こされることもあるかもしれません。


そこで、場合によっては遺言作成時の動画を撮影したり、作成時の医師の診断書を保管しておくなど、意思能力があることを証明できる対策を取っておくと良いでしょう。

 

遺言書は封をしていない状態でも有効?【その1】

遺品整理をしていると故人の遺言書が見つかることがあります。でも発見した遺言書が封をしていなかったらどうでしょうか。

 

見つけた遺言書が果たして法的に有効なのか、不安になるかもしれません。
また、場合によっては発見した遺言書をうっかり開けてしまって、あとから不安になるかもしれません。
このような遺言書は無効になってしまうのでしょうか。

 

今回と次回で、封をしていない遺言書が有効なのかどうか、また法的に効力のある遺言書の要件は何かを解説していきます。

 

遺言書は封をしていない状態でも有効

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遺言書は、多くの場合封印された状態で保管されています。内容の秘密を保つため、また変造や偽造を防ぐために、大抵の場合は封印されているわけです。

ですので、見つけた遺言書がもし封をしていなかったら、これは有効な遺言書なのかどうか不安になるかもしれません。

 

でも心配する必要はありません。封をしていない遺言書でも法的に有効なものとして認められます。

後で解説する法的に有効と認められる条件さえ満たしていれば遺言書は有効なのです。封印して保管することはその条件に含まれていません。

もちろん、秘密保持や偽造防止の観点からは封印するのがベストではあります。それでも、封印されていないことが原因で自動的に無効になるわけではないのです。

 

とはいえ、自筆証書遺言の場合は、封印されていないものでも家庭裁判所での検認手続きが必要です。
発見後はすみやかに裁判所に検認を申し出ましょう。

 

用紙や筆記用具のルールも特に定められてはいない

遺言書は封筒に入っておらず、紙切れ一枚、それもメモのようなものに書かれていたとしても、条件さえ満たしておけば有効なものと認められます。
極端な話ですが、手のひらサイズの小さなメモに鉛筆で書いた遺言書でも、それゆえに無効とはなりません。

 

遺言書は、民法で定められたルールに則って書かなければいけませが、そのルールに、遺言書の用紙やサイズ、筆記用具、封印の有無は含まれていないのです。

 

とはいえ、実際にあまりに極端な方法で遺言書を遺すと、相続人から遺言時の精神状態を疑われかねません。
また規定されてはいないとはいえ、実際に鉛筆などで書いてしまうと、後で読み取れなかったり、改ざんの恐れもあるので絶対に避けましょう。


すでに開封されている遺言も有効

では、もし発見した遺言書がすでに開封されていたらどうでしょうか。

明らかに元々は封印されていたのになぜか開封されている、というケースもあるかもしれません。
もしくは、発見者がうっかり遺言書を開けてしまった、ということもあり得るでしょう。

 

実はこの場合でも、遺言書の効力に変わりはありません。開封されている遺言書も無効にはならないのです。

もし、開封された遺言書が自動的に無効となるのであれば、わざと遺言書を開封しようとする人も出てくるかもしれません。開封して自分に不利な内容であろう遺言書を無効にしようとするかもしれないわけです。

 

このようなことから、遺言書が開封されていても直ちに無効とはなりません。開封された遺言書を見つけた場合も速やかに家庭裁判所の検認手続きを申し出るようにしましょう。

 

遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿は重大なペナルティ

もし、開封済みの遺言書を見つけた発見者が、その内容が自分に不利だったために隠したり捨ててしまった場合はどうでしょうか。

この場合は、重大なペナルティが科せられることになります。遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿した場合は、相続欠格といって相続人の権利を失う、と民法で定められています。

 

遺言書を勝手に開封すると5万円以下の罰金

開封済みの遺言書も有効であるとはいえ、遺言書は発見者が勝手に開封して良いというわけではありません。

 

民法1004条では、自筆遺言証書と秘密証書遺言に関して勝手に開封してはいけないと定められています。家庭裁判所で検認をして、相続人全員かその代理人の立ち合いのもとで開封しなければいけないのです。
もしこれを破ると5万円以下の過料(罰金)が科せられる可能性があります。

 

たとえ相続人全員の同意があっても、自分たちで勝手に開封してはいけません。

 

うっかり開けてしまった場合でも検認が必要

では、遺言書を見つけたときにうっかり開けてしまった場合はどうでしょうか。

実のところ、5万円以下の過料(罰金)が実際に科せられるのは大変まれなケースです。うっかり開けてしまった場合でも落ち着いて対処するようにしましょう。

 

決して再びのり付けしようなどとしてはいけません。開封した遺言書も依然として法的に有効なので、速やかに裁判所に持って行って検認手続きをするようにしましょう。

 

遺言書を作成するときは封筒に入れるのがおすすめ

では、遺族が遺言書を発見したときにうっかり開けてしまうリスクを無くすために、遺言書は封筒に入れない方が良いのでしょうか。

 

そうしておけば、遺族がうっかり開けてしまうこともないし罰金の心配をする必要もなく安心だ、と思われるかもしれません。

 

ですが、この方法はお勧めできません。法律で定められているわけではないとは言え、やはり遺言書は封筒に入れて保管するのがベストです。

 

封筒に入れていない状態だと、第三者や相続人の一人に遺言書の中身を見られてしまう可能性があります。
また、遺言書が封印されていないことが原因で、相続人間のトラブルを招いてしまう可能性もあります。
封印されていない状態の遺言書が発見者に有利な内容だと、他の相続人の不信感を招いてしまうかもしれません。
これは本当に遺言者が書いたものなのか、遺言者の意思を反映したものなのか、他の相続人が疑いの目で見てしまう可能性があるわけです。

 

封筒に入れて封印することでこうしたリスクを防ぐことできます。秘密保持が担保されますし、誰かに中身を改ざんされたり偽造されたりする心配もありません。


遺言書の封筒の書き方

では、実際に遺言書を封筒に入れて保管するときはどうすれば良いのでしょうか。

 

遺言書そのものにも用紙やサイズの規定がないわけですから、当然封筒のサイズや色にも特にルールは定められていません。
とはいえ、後々のリスクを減らすことを考えると、裏紙のあるタイプのものがオススメです。これなら中身が透けて見えてしまうことがありません。

 

封筒の表には「遺言書」や「遺言書在中」などと書いておくと良いでしょう。

 

裏には「本遺言書は、遺言者の死後、未開封のまま家庭裁判所に提出のこと」などと添え書きしておきます。
そして遺言書の作成年月日を書き、署名押印します。押印の印は遺言書に用いた印鑑を使います。

 

封筒の裏に記入することをまとめると以下のようになります。

  • 発見者に検認を促して、うっかり開封しないよう注意書きする
  • 遺言書の作成年月日と署名押印
  • 押印は遺言書に用いた印鑑で、署名の後とのり付けした部分の2か所

 

なお、封をするときは簡単にはがせないように、液体のりなどでしっかりとめておきましょう。

遺留分侵害額請求の時効を止める(中断させる)方法

前回の記事では消滅時効には、時効の中断があるということについて少し触れました。

では、遺留分侵害額請求の時効を中断させるためには、どうすれば良いのでしょうか?

 

遺留分侵害額請求の時効を止める(中断させる)方法

内容証明郵便がお勧め

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遺留分侵害額請求権は形成権であるといわれています。
形成権とは、単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利です。

それで、相手の反応に関わりなく、こちらが遺留分侵害額請求を行うという意思表示をすれば、時効は中断します。

 

口頭・メール・FAXいずれの手段で伝えることが可能ですです。

ただし、証拠を残すという観点からは、相手方に内容証明郵便を送付しておくことをお勧めします。

 

フォーマットが決まっているわけではありませんが、内容証明郵便には、被相続人の情報、相続開始日、交渉相手である相手方の情報、遺留分侵害額請求を行う旨の記載、自分の氏名などを含めておきましょう。

 

遺留分侵害額請求を行うときの4つのステップ

遺留分侵害額請求を行う場合は、次の4つのステップで進行していくと考えておくと分かりやすいでしょう。

 

(1)遺留分侵害額請求の内容証明郵便を送ります。
これで時効を中断させることができます。


(2)裁判外での交渉を行います。
内容証明郵便が相手方に到着したことを確認できたら、当事者同士で話し合いを始めます。


(3)合意書を取り交わします。
裁判外での交渉で話がまとまれば、合意書を取り交わしておきましょう。
この時、合意書は公正証書で作成しておくことをお勧めします。
公正証書で作成しておけば、金銭の支払いがされない時に強制執行が可能になります。


もし話がまとまらない場合は、(4)裁判所で遺留分侵害額請求の調停を行います。
どうしても折り合いが付かず調停が不成立の場合は、訴訟へと移行していきます。


遺留分侵害額請求に関する注意点

遺留分侵害額請求を行う時には、以下の点にも注意しましょう。

 

遺留分侵害額請求は、相手方に対する金銭の請求という形で行われますが、この金銭債権にも時効があります。
改正民法により、金銭債権の消滅時効は、権利行使できることを「知った時」から5年です。

 

権利行使できることを知らなかった場合も「できる時」から10年で消滅するとされています。

 

遺留分侵害額請求の場合は、通常であれば権利行使できることを知っているはずなので、5年で消滅することになります。

 

せっかく遺留分侵害額請求が認められた場合でも、金銭の請求をせずに5年以上放っておくと、遺留分相当の金銭請求ができなくなってしまいます

 

相手方から支払いがされるまでは、気を抜くことはできません。

また、遺留分が関わる相続では、遺言が無効であるとして遺言無効確認調停や訴訟が起こされることがあります。

 

ただし、遺言無効確認訴訟を起こしても、遺留分の消滅時効は中断しません

 

遺言無効の訴訟を起こしたので安心と考えていると、後日、敗訴したときに、遺留分の請求ができなくなっているということになりかねません。

 

遺留分侵害額請求は、別途行っておく必要があります。

 

贈与や遺贈の無効についても同様です。
無効だと思って遺留分侵害額請求を行使しなかった場合、消滅時効は進んでいくと考えられていますので、忘れずに請求をしておきましょう


まとめ

今回は遺留分侵害額請求の時効を止める・中断させる方法についてみていきました。


現物返還と金銭請求のどちらを原則とするかが大きな違いでしたが、現在の遺留分侵害額請求では、金銭請求が原則です。