遺留分侵害額請求の時効を止める(中断させる)方法

前回の記事では消滅時効には、時効の中断があるということについて少し触れました。

では、遺留分侵害額請求の時効を中断させるためには、どうすれば良いのでしょうか?

 

遺留分侵害額請求の時効を止める(中断させる)方法

内容証明郵便がお勧め

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遺留分侵害額請求権は形成権であるといわれています。
形成権とは、単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利です。

それで、相手の反応に関わりなく、こちらが遺留分侵害額請求を行うという意思表示をすれば、時効は中断します。

 

口頭・メール・FAXいずれの手段で伝えることが可能ですです。

ただし、証拠を残すという観点からは、相手方に内容証明郵便を送付しておくことをお勧めします。

 

フォーマットが決まっているわけではありませんが、内容証明郵便には、被相続人の情報、相続開始日、交渉相手である相手方の情報、遺留分侵害額請求を行う旨の記載、自分の氏名などを含めておきましょう。

 

遺留分侵害額請求を行うときの4つのステップ

遺留分侵害額請求を行う場合は、次の4つのステップで進行していくと考えておくと分かりやすいでしょう。

 

(1)遺留分侵害額請求の内容証明郵便を送ります。
これで時効を中断させることができます。


(2)裁判外での交渉を行います。
内容証明郵便が相手方に到着したことを確認できたら、当事者同士で話し合いを始めます。


(3)合意書を取り交わします。
裁判外での交渉で話がまとまれば、合意書を取り交わしておきましょう。
この時、合意書は公正証書で作成しておくことをお勧めします。
公正証書で作成しておけば、金銭の支払いがされない時に強制執行が可能になります。


もし話がまとまらない場合は、(4)裁判所で遺留分侵害額請求の調停を行います。
どうしても折り合いが付かず調停が不成立の場合は、訴訟へと移行していきます。


遺留分侵害額請求に関する注意点

遺留分侵害額請求を行う時には、以下の点にも注意しましょう。

 

遺留分侵害額請求は、相手方に対する金銭の請求という形で行われますが、この金銭債権にも時効があります。
改正民法により、金銭債権の消滅時効は、権利行使できることを「知った時」から5年です。

 

権利行使できることを知らなかった場合も「できる時」から10年で消滅するとされています。

 

遺留分侵害額請求の場合は、通常であれば権利行使できることを知っているはずなので、5年で消滅することになります。

 

せっかく遺留分侵害額請求が認められた場合でも、金銭の請求をせずに5年以上放っておくと、遺留分相当の金銭請求ができなくなってしまいます

 

相手方から支払いがされるまでは、気を抜くことはできません。

また、遺留分が関わる相続では、遺言が無効であるとして遺言無効確認調停や訴訟が起こされることがあります。

 

ただし、遺言無効確認訴訟を起こしても、遺留分の消滅時効は中断しません

 

遺言無効の訴訟を起こしたので安心と考えていると、後日、敗訴したときに、遺留分の請求ができなくなっているということになりかねません。

 

遺留分侵害額請求は、別途行っておく必要があります。

 

贈与や遺贈の無効についても同様です。
無効だと思って遺留分侵害額請求を行使しなかった場合、消滅時効は進んでいくと考えられていますので、忘れずに請求をしておきましょう


まとめ

今回は遺留分侵害額請求の時効を止める・中断させる方法についてみていきました。


現物返還と金銭請求のどちらを原則とするかが大きな違いでしたが、現在の遺留分侵害額請求では、金銭請求が原則です。